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高校生必見 絵本翻訳コンクールを大攻略

 

今年度の課題絵本(提供=絵本翻訳コンクール事務局)

 6月1日からエントリーを開始した、『第12回 神戸女学院大学 絵本翻訳コンクール』。高校時代に翻訳を経験し、英語を学ぶ楽しさを感じてもらいたいとの思いから2010年に始まり、今年で12回目を迎える。毎年多くの応募があり、その中から選ばれた最優秀賞と優秀賞の受賞者には、世界に1冊だけの自分が訳した絵本が贈られる。今年はオランダの絵本“Lisette's Green Sock”(作:Catharina Valckx)の翻訳が課題だ。この記事では、翻訳家体験ができる本コンクールについて紹介していく。


昨年度の副賞絵本(提供=絵本翻訳コンクール事務局)

公開されている情報を活用しよう

 いざやってみようと訳し始めてから気づく、堅苦しい自分の直訳。「本当にこれでいいのだろうか」と思ったそこのあなた。神戸女学院大のホームページに、良い翻訳をするヒントがたくさん載っていることを見逃してはないだろうか?3つの情報源をご紹介しよう。

 1つ目は、実施要領の中にある「審査員からのアドバイス」というところ。(以下抜粋したもの)。


1.必ず課題作の本文全体を読んで、しっかり全体のイメージをつかんでから審査範囲を訳しはじめましょう。裏表紙やフラップ(表紙の折り返し部分)にも目を通しておきましょう。

2.英語と日本語では、文法はもちろん、文のつくりも違います。読者に的確に伝わる自然な日本語にするために、原文ではひとつの文を訳文ではふたつにわけたり、副詞を形容詞的に訳したり、必要に応じていろいろと工夫してみましょう。

3.子どもが読むものですから、正しい日本語を意識しましょう。わかりやすい言葉づかいも必要ですね。また、絵本では「だ・である」調より「です・ます」調を使うことが多いのですが、語尾は作品の内容や持ち味次第。作品にぴったりなほうを選びましょう。

4.対象年齢を意識しましょう。出版社は課題作の対象を 2〜5歳・5〜7歳としていますが、訳文の対象年齢もそれと同じでいいでしょうか? 変えたほうがいいでしょうか? 訳文の対象年齢を決めたら、それにあわせて使う漢字を選びましょう。まだ習っていない漢字は使わずひらがなにする、使う場合には ふりがなをつける、といった工夫をしてみてください。また、漢字を全く使わないという選択肢もありますので、よく考えて決めましょう。

5.ひらがなが多くなると、どうしても文章が読み難くなります。そんなときには、言葉と言葉の切れ目をはっきりさせるために、「分かち書き」を使うといいかもしれません。「分かち書き」とは、文節の切れ目でひとマスあけることです。どこであければいいのかは、「ね」を入れてみるとわかります。

例: むかしあるところによんひきの子うさぎがいました。(分かち書き前)

むかし(ね)あるところに(ね)よんひきの子うさぎが(ね)いました。

(「ね」を入れる)

むかし あるところに よんひきの子うさぎが いました。

(「ね」の位置をひとマスあけて、完成)

6.絵本は読み聞かせることの多いもの。訳文を声に出して読んでみましょう。友だち同士で読みあわせてみるのもおすすめです。心地よい響きやリズムのある訳文に仕上げましょう。

7.絵本というくらいですから、絵も大きな役割を果たしています。絵で語られる内容もしっかり読み取りましょう。主人公はどんな性格? どんな表情? 背景は? 登場人物が日本語で話すとしたらどんな言葉づかい? 絵とことばがちぐはぐにならないよう気をつけましょう。

 この7つのアドバイスを取り入れるだけで、翻訳の質が格段に上がるだろう。もちろん、翻訳には言葉のセンスが問われるが、心がけ次第で翻訳のレベルアップが可能だ。このコンクールにチャレンジする高校生は是非、このアドバイスを取り入れてみてほしい。

 2つ目は、受賞者発表後にホームページに掲載される『審査員からのコメント・総評』というもの。第7回目以降のコンクールにはすべて掲載されている。その中には審査のポイントや、講評が掲載されている。昨年の場合は、講評から残念な翻訳について例を挙げて説明している動画の視聴画面に移ることができるので、課題図書を読んでいなくても、だいたいは理解できるようになっている。審査員はプロの翻訳者・通訳者だ。この資料を見れば、プロの方がどんな視点で審査しているのか理解できるヒントになる。受賞者に選ばれるような方々のタイトルがどういったものなのか、チェックしてみるといろいろな学びがあるだろう。ワンフレーズで伝わる、読者に選ばれるタイトルづくりを心がけるのはとても大事だ。

 これらの情報源を上手く活用して、審査員の先生をあっと驚かせるような翻訳を作ってみよう。


審査員の先生からメッセージ

 K.C.Pressが特別に、神戸女学院大の審査員の先生から高校生にむけたメッセージをお願いしたところ、3人の先生がそれに応えてくれた。


中村 昌弘先生からのメッセージ

 神戸女学院大学絵本翻訳コンクールへの応募を考えている高校生の皆さんへ。翻訳とは著者が伝えたいことを読者に伝える作業です。ですから、まずは著者が伝えていることをしっかり把握し、次にその内容が読者にきちんと伝わるように表現しなければなりません。その際に大切なのは、原文そのものを読むだけでなく、文字では書かれていない部分も意識することです。著者はどんな人でしょうか。読者はどのくらい漢字を知っているでしょうか。著者はどんな意図を込めて物語を書いたのでしょうか。絵はどんなタッチで何を伝えているでしょうか。こうして文字にはなっていない部分もしっかり読みとってから作業をすると、より完成度の高い訳文を創ることができるでしょう。また、訳文の文字数にも注意を払ってください。原文より長くなりすぎていませんか? 文末の一文字までにも気を抜かず、最小限の文字数で原文の内容をしっかり読者に伝える訳文を目指してください。

奥村 キャサリン先生からのメッセージ

Hello to all the high school students interested in translation!

I would like to strongly encourage you to take up the challenge of participating in our translation contest.

Translation is not easy, and it requires many skills such as English comprehension, analysis, and writing skills.

But it is extremely rewarding! Translation is a fantastic way to immerse yourself in another culture.

We are looking forward to many entries!!

Susan E.JONES先生からのメッセージ

 絵本翻訳コンテストに参加する高校生には、自分の翻訳した絵本の対象読者を考えることをおすすめします。読者である子どもを具体的に想像してみてください。その子は何歳ですか?1人で読んでいるのか、誰かに読んでもらっているのか。その子はどんな反応をするだろうか?また、自分の靴下の使い方を考え始めるでしょうか?それとも、猫たちがLisetteに意地悪をすることを心配するだろうか?もちろん、読み手によって違いはありますが、絵本を翻訳する際には、その子どもを考えることが大切です。がんばってくださいね。

コンクールの募集要項

 今年もコロナで課外活動に取り組みにくい状況だが、このコンクールなら1人、または同じ高校に在籍する3人までのグループでチャレンジすることができる。提出期限は8月31日(火)必着(8月2日までに要事前エントリー)。10月1日(金)に受賞者が発表され、その後「受賞者の集い」が開催される(新型コロナ感染拡大防止対策のため、オンラインで開催予定)。翻訳を通して表現する楽しさを味わってみてはどうだろうか。


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